あたしが学校に居る数時間の間、“確実”に、何かがこの家で起こったのだ。

そう確信し、ゆっくりと恐る恐る、物音を立てないよう廊下を進む。突き当たりのリビングに近づくにつれ、次第に強まってきた匂いに吐き気がした。

ごくり、覚悟を決めるかのように唾を飲み込み、リビングへと繋がるドアのノブに手をかける。

かちゃり、と音が鳴るのと同時に広がった凄惨な光景に、立ち竦んで絶句した。


「お父さん…?」


部屋中、どこを見ても、赤·朱·紅…。
その中心に、俯せに倒れるお父さん。床に広がる赤い海…。

言葉なんて、何一つ出てこない。
自分が何を思っているのか、考えているのか、それさえわからない。

あまりにも受け止めきれない目の前の現実、ただ小刻みに震える手と身体、そして込み上げる吐き気に耐え切れず、その場で嘔吐した。