そんな中、不意に脳裏に映し出された一連の出来事。あの雨の日の記憶に、握りしめる両手にさらに力が入る。そんなあたしに構うことなく、理人は続けた。
「美凪が今何を悩んでいるか、俺は別にそれを問い質そうとは思わない。聞いたからって美凪の気持ちを全て理解するなんて、所詮他人である俺には無理な話なんだ。」
そして、一旦そこで言葉をきる。と同時に立ち上がり、あたしの傍へ歩み寄ってきた理人。あたしへの視線をそらすことなく、尚も口を開く。
「自分を完璧に理解できるのは自分だけ。美凪もそう思ってるから、誰にも相談しないんだろ。」
…――あぁ。そうだ、その通り。
まるで諭すように、確かめるように問われた言葉に、やっぱり返す言葉なんて何一つ無かった。
あたしは別に、叔父さんのことも理人のことも藍香のことも、信頼していない訳ではない。信頼とかそんな次元を越えて、あたしという他人を理解し尽くせる人はいないと、そう思っているだけ。
言い当てられた本心に、胸がちくりと痛む。それを隠すように見返した刹那、真剣みを帯びていた理人の表情が優しく緩んだ。


