透明水彩


でもさすがに、このタイミングで笑みを零すのは明らかに場違いだったらしい。案の定目の前の藍香は、不審げにあたしの顔を覗き込んでくる。


「美凪…?」

「あ、ううん。何でもないよ。」


けれど、矛盾の話をすれば必然的に、理解しがたい内容の手紙の話に帰着するだろう。その事態を避けたいあたしには、今の心境を伝えることなどできないし、本当のことは言えない。

だから、何とかごまかそうと曖昧に笑顔を繕おうとした――つもりだったのだけれど。


「……藍香、深い追求はやめておきなよ。今日俺達は、美凪を尋問するためにここへ来た訳じゃないだろ。」


刹那、藍香の後ろから上げられた声に、あたしと藍香の視線が同時に声の主へと向けられる。

それにより必然的にあたしと藍香の会話は遮られ、あたしの事情を知らないのにも関わらず、ナチュラルに助け舟を出してくれた理人に感謝した。