透明水彩


「いいの、気にしないで。つーかむしろ、ありがと。……だからもう、暗くなるようなこんな話はやめよう。せっかくふたりが来てくれたのに余計辛気臭くなるし、ね?」


再び口を開こうとする藍香を両手で制し、気を取り直すように努めて明るく言葉を返す。

理人がベッドに凭れて床に座るのを横目で見つつ藍香を見やれば、彼女はあたしの手元を見て、今度は不思議そうに首を傾げた。


「……何?」

「…いや、美凪それ。変わったデザインのリングだな、と思って。」

「ああ、これ……」


凝視される、一点。――左手の中指に光るそれは、ある意味ものすごくその存在を誇示していた。その事実に、あたしも藍香に指摘されて今さらながらに気がつく。


「これ、形見なんだ。両親の。」

「へぇ…。」


両親のものかも定かじゃないのに、“形見”って言い方が正しいのかどうかはわからない。けれど間違いなく、両親があたしに残した物。

…――でもそんなことより、狙われているとか装置とか、その辺に関しては半信半疑なくせに、律儀にも“肌身離さず”の言い付けを守っている自分があまりにも矛盾している気がして、思わず自嘲的な笑みが零れた。