透明水彩


「……俺が1人で、ここに来たとでも?
残念だったね。俺はそこまで、無鉄砲じゃない。」


そう言って理人は、胸元の小型無線へと何かを呟く。
この距離じゃ何を言ったかなんてわからなかったけれど、刹那、反対側の窓から飛び込んで来たのはケイと湊だった。


「遅いよ、2人とも。」

「悪かったなぁ!ちょっとヤボ用があって遅くなっちまった。」


彼らも理人同様、銃を構えて室内の様子を窺う。
そしてケイがあたしに近寄り、未だ果てしなく痛む傷口の処置に取り掛かった。


「……ったく。勝手に無茶やってんじゃねえ。馬鹿かテメェは。」


手を休めることなく、言葉を紡ぐケイ。
そんな彼にあたしが返す言葉なんて何一つなくて。それでも優しく頭に触れるケイの手に、肩の痛みも相まって本当に涙が出てきた。


「…――ほぅ。2人、仲間が来ていたみたいだねぇ。
だが藤倉君、我々にも伏兵がいることを知らない訳じゃないだろう?」


けれど、湊に銃を向けられている春水さんがそう言った刹那、室内の雰囲気がガラリと変わる。

そして割られた窓や閉められていたドアから飛び出してきた武装集団に、あっという間に包囲された。