透明水彩


バンッ、と乾いた音が突如、室内に響く。
撃ったのは理人でもなければ、芹奈さんでもない。もちろん、あたしが銃を撃つわけがない。

そんなことを僅か一瞬のうちに考えた刹那、左肩に大きな衝撃が走った。同時に吹き出す、赤。少し遅れて全身に伝わる、痺れるような痛み。


「…――っ!!」

「美凪っ!」


あたしが撃たれたのだと、気づいたのは理人の声が頭に届いてからだった。どくん、どくんと、脈打つたびに連動する痛みと、流れる赤。

傷を押さえて唸りながらうずくまれば、さっきも聞いた声と高らかな笑い声が鼓膜を刺激する。


「ハハハハハッ!馬鹿だねぇ、藤倉君。
敵の頭が芹奈じゃないことは、君も知っているだろう。注意力の散漫は、また大切な人を滅ぼすんじゃないかい?」


…――そうだ、春水さん……。

ずっと口を噤んだまま、いつの間にか身を隠していた彼に、あたしと理人の注意が向いていた訳もなく。

悔しそうに顔を歪め、春水さんを睨みつける理人。
あたしは春水さんに、撃たれたんだ。