透明水彩


それに、あたしは単身、1人でここに来た。
あまりにも勝手な独断を下しての現状に、もっと怒られるのが普通じゃないの?逆に調子が狂う。


「……赤木。そのまま、動かないで。
銃を拾おうとする素振りを見せた時点で、頭は吹っ飛ぶよ。」


相変わらず芹奈さんに銃を向けたまま、理人は恐ろしい言葉を淡々と紡いだ。

この時点では、誰が見ても完全に優勢なのは理人だった。
芹奈さんは血が滴る右手を押さえたまま、悔しそうに顔を歪めている。

でもあたし達は……、というかあたしと理人は、この部屋にはまだある人物がいることを視界には入れていなかった。

理人の瞳に映るのは、あくまでもあたしと芹奈さんで。あたしの瞳に映るのは、理人が芹奈さんへと銃を向けるその光景。

存在自体を忘れられていたその人物は、虎視眈々と理人があたしを守るために向ける警戒心が薄れるのを待っていたのだ。