透明水彩


――あの人が、お父さん達を裏切った人。

――あの人が、敵の親玉。

そう確信して思わず一歩後ずさったあたしに、男はニヤリと口角を吊り上げた。


「……ああ。自己紹介がまだだったね。ワタシは赤木春水。君のご両親の親友……否、“元”親友と言った方が正しいのかな。」


それはそれは、楽しそうに。
あたしの確信を裏付けるように、彼――赤木春水(あかぎ しゅんすい)は、そう淡々と述べた。

裏切りは、やっぱり本当だったんだ。

その事実にただ唖然とするあたしを見て、女の方はさも馬鹿にしたように、怨みをぶつけるように、冷たく蔑む鋭い瞳をあたしに向ける。


「私は娘の芹奈。この時代のアナタには、たまたま偶然、大学で出会ったわ。」


芹奈(せりな)……
あたしと、大学で出会った……?

あまりよく整理しきれないまま相手を見据えれば、カチャリという無機質な音とともに、銃口があたしの方へと向けられた。