歩みを進めるうちに景色はガラリと変わり、森のように木が生い茂る地点へと足を踏み入れる。
天気は相変わらず悪く、分厚い雲のせいで気温も低い。そして森の中は、生い茂る木のおかげでより一層暗かった。
「……足元、気をつけてくださいね。」
「うん、大丈夫。」
張り巡らせられた木の根が浮き上がり、足場は相当悪い。
時々莱に手を借りながら、奥へ奥へと進む。
時折聞こえる木葉の揺れる音や、小動物が動く音に一々驚きながら、懸命に歩いた。
…――刹那。
「…っ!ら、い…?」
ゾワリ、背筋に纏わり付くような悪寒が走る。立ち止まった莱は人差し指を口の前で立て、あたしに静かに、と合図を送る。
莱が鋭く見据えるあたしの後方。確かに今、決して小動物のものではない音がした。鋭い、誰かの視線を感じた。
それも恐らく、相手は1人ではない。視線はまるであたし達を囲むように、四方八方から送られているようにも感じる。


