透明水彩



◆◆◆


「ねえ、莱!あたしは反対だよ。何であの人のために、莱が行かなきゃならないの?」

「…芽梨には関係ないだろ。」

「関係なくない!何かあたし、嫌な予感がするの。だから行くの止めてよ。」

「何言ってんだよ、今さら。それに嫌な予感って、どうせ芽梨の勘なんでしょ。」

「そう、だけど……」


朝食を終えてから8分。
いつもの出入口に向かおうとしていたあたしの耳に届いた、芽梨ちゃんと莱の声。

2人がいる大広間を覗き込めば、芽梨ちゃんは莱の腕にしがみつき、離れようとはしない。


「ほら、早く離して。美凪サン、来ちゃうだろ。」

「嫌だってば。」

「……芽梨、いい加減にしなよ。」

「え?…ちょ、莱っ!」


そんな芽梨ちゃんを無理矢理引きはがし、莱は大広間を出ようと彼女に背中を向ける。

視線が合いそうになって、あたしは廊下の壁へと身を翻した。