透明水彩


でもそれなら、理人が悔やむ必要なんて無い。
あたしが勝手に決断して、みんなに悲しみと苦しさだけを遺した。

しかも、将来を約束した次の日に、自分を愛してくれた人の前で自害するなんて……。


「……あたしは理人を、裏切ったんだね。」


あたしがそうぽつり、と零した言葉に、理人が伏せかけていた顔を勢い良く上げる。


「それは違うよ、美凪。美凪は俺を、裏切ってなんかいない。美凪は俺を、俺達を助けるために死んだんだ。」

「でもあたしは、理人の目の前で死んだんでしょ?」

「……そう、だけど。でも、あのままだったら、みんな死んでたかもしれない。ただ死ぬだけじゃなく、美凪は敵に、自分の死を見せ付ける必要があったんだ。」


ただひとりぼっちで、ひっそりと死んだところで抗争は終わらない。
あたしの死を敵が知って初めて、あたしの死が意味を持つ。

けど、それもわかるけれど…