透明水彩


「はぁ…、まったく。そんなこと、本当に誰に吹き込まれたんだか…。」


そして真っすぐに、あたしを見つめる瞳。
余りにも真っすぐ過ぎて、あたしはゴクリ、と唾を飲み込んだ。


「…――本当だよ、その話は。だけど、」

「だけど?」

「うん。その話はもう、気にしなくていい。一切、聞かなかったことにして。」


けれど紡がれた言葉に、浮かぶのは疑問符ばかり。しかも、聞かなかったことにして、だなんて、理人にとってこの話は、そんなにも触れたくない話なの?


「……何で?」

「何でって、それは当たり前だろ。今の美凪は、この時代の美凪とは違うんだ。だから俺は、そんな過去の話に君を束縛するつもりはないよ。」


恐る恐る問いかけたあたしに返ってきた返答は、優しい笑顔とそんな言葉。

確かに今とこの世界のあたしは違うし、この世界のあたしはもういないけど。

優しい笑顔の下に僅かな切なさと悲しみが見え隠れして、余計このまま黙って引き下がるわけにはいかなくなった。