透明水彩



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藍香から告げられた事実は、思いのほか衝撃的だった。

あたしと理人が、婚約?

今のあたしと理人だったら、ありえないと間違い無く一蹴しただろう。

なのに、この世界のあたしと理人は……

別に、理人のことは嫌いじゃない。
むしろ、確かに好きの部類に入るのは間違いないだろうけれど。

それは恋愛感情って訳じゃなくて……

それに、それ以上に。
あたしは婚約した翌日、死んだらしい。
その日は、理人と一緒にいたのだろうか。それとも別々にいて、理人はあとからあたしの訃報を聞かされたのだろうか。

考えるほどに苦しくなって、本人に直接聞こうと思い立ったあたしは、今、理人の部屋で理人と相対している。


「どうしたの、美凪。そんなに思い詰めた顔して、俺の部屋に来るなんて。」


小さいガラステーブルを挟んだ向こう側、理人はそう言っていつものように微笑んだ。