透明水彩


「……ごめん、美凪。よくよく考えたら、ボスに美凪には未来のことをあまり教えちゃいけないって、そう言われてたんだった。」

「何言ってんの、今さら。どうせあたしの未来のことなんだよ。あたしが知って、困ることはないじゃん。」


なかなか口を割らない藍香に、そう言って詰め寄る。そして藍香の横に腰掛ければ、ギシッと微かにベッドが軋んだ。


「……ねぇ藍香。あたし、あたしだけ知らないことがあるのとか本当に嫌なの。理人が教えてくれないなら、もう藍香に聞くしかないじゃん。ね?」


両親の件だって、そうだった。
あたしだけ、何にも知らなかった。

何か、ことが起こってからじゃ遅いの。知れるときに知っておかなきゃ、あたしはまた誰かを傷つけてしまうかもしれない。

そんなあたしの気持ちが伝わったのか、藍香の視線はゆっくりとあたしを捉える。そして小さく息を吐き、そっと言葉を紡いだ。


「……この時代の美凪と理人、婚約してたの。しかも、あんたが死ぬ、前日に。」


予想だにしない事実を、あたしに向けて。