透明水彩


「おまたせー。」


店から出て、店の前で待たせていた莱に声をかける。
つまらなそうに視線を泳がせていた莱は、あたしの声に振り向くと小さく息を吐いた。


「遅かったですー。」

「じゃあ、ついて来てくれれば良かったじゃん。」

「いや、それはさすがに悪いかなって……」


何を遠慮してるのか、店の中まではついて来なかった莱。
歯切れ悪く言葉をごまかしたかと思えば、何気なくあたしの手から紙袋を持ち上げる。


「……そんなことよりほら、そろそろ腹減りません?さっき言ってた軽食屋、せっかくだから寄ってから帰りましょうよ。」


そしてまた珍しい笑顔でそんなことを言うから、こくん、と縦に頷くしか他なかった。

莱が言うその軽食屋は、今いた店から3分ほど歩けば着く距離にある。

見た目は普通の家と変わらず、ドアに可愛らしく“のえる”と書いてある看板がなければ、素通りしてしまうような、そんな場所。