あたしと莱の間を、生温い風が吹き抜ける。
そしてそのまま続く、数分間の沈黙。その沈黙を破るように、莱が大きく息を吐いた。
「……ってことで、そろそろ街の方行きますか。」
「そう、だね。」
未だ釈然としない気持ちを抱えたまま、俯き気味で前方の莱を追う。数台の車に追い越されながら、左右に広がる人の気配のない、廃れた建物の姿を横目で見た。
大きいビルにしろ、普通の住宅にしろ、窓ガラスは無残に割れ、壁面だって焼焦げたように黒くなっていて。
思いのほかリアルな光景に、恐怖が沸き上がる。こっちでこれほどなら、旧市街地の方はどれほどのことになっているのだろうかと、悲しくなった。
無意識に手を伸ばし、ぎゅっと、莱のジャケットの袖を握りしめる。
「……大丈夫ですよ。ここはちょっと酷い有様ですけど、もう少しで街に着きますから。」
そんなあたしの気持ちが伝わったのか、それはわからないけれど。あたしを気遣うように振り返った莱は、優しい笑みをあたしに向けてくれる。
まるであたしを、安心させるかのように。


