透明水彩


「……まぁ、そっちはまだ色々危険なんで、またの機会にってことでいいですか?」


未だ旧市街地と呼ばれる方向へと視線を向けていたあたしに、莱は窺うようにそう尋ねる。けれど少し、その問いに引っ掛かりを覚えた。


「いい、けど。……危険、って何で?」


抗争は収束している。
それなら、何で今現在も危険なのか。

そう問い掛け返し、あたしは小さく首を傾げた。
そんなあたしの様子を見た莱が、言葉を選ぶようにゆっくりと答えを紡ぐ。


「えっと……、簡単に言うと、CROCEの人間がまだうろついてるんです。ごくまれにですけどー。だから万が一、今の美凪サンをそいつらに発見される訳にもいかないじゃないですか。」

「…え?あたしは死んで、抗争も収まっているのに、何でうろついたりなんか……」

「残党狩りですよ、ROSAの。だから今も、抗争の際に砦となった美凪サンの家周辺を徘徊してる。敵サンは相当、俺達が嫌いみたいですねー。」


そこまで説明した後、ギリッと強く奥歯を噛み締めた莱の様子に、何だかあたしも、いたたまれない気持ちになった。