透明水彩


そんな中、黙々と目的地への歩みは続く。
思案に耽るあたしを気遣っているのか、あたしより若干前を歩く莱は何一つ言葉を発しはしない。

何か声をかけようかどうかを迷っているうち、市街地方面と隣町方面への分岐点へと差し掛かった。


「……え、あれ?」


刹那、そんなマヌケな声を出して立ち止まったのはあたし。不思議そうな表情をして振り向いた莱と、視線がぶつかる。


「どうかしましたー?」

「あ、いや……。あの、市街地って、こっち側じゃなかったかなって……」


そして素直にぶつけてみた問いに、莱は納得したかのように数回首を縦に振った。


「あぁ。4年前まではそうだったんですけど、抗争に巻き込まれちゃって。今はそーいうお店とか諸々、全部向こう側にかたまってるんです。」

「……じゃあ、こっちは、」

「旧市街地。今はもう、住んでる人はほとんどいません。……ほら、美凪サンの家近辺だって、人の気配とかしなかったでしょー?」


…――確かに、そうだったかもしれない。

あたしがこの世界に来て、最初に感じた違和感。あまりにも閑散として、静か過ぎた家周辺の様子が頭をよぎり、どくん、と小さく胸が鳴った。