透明水彩


「……は?オレ、無理だから。めんどくせぇんだっつの。何だって俺が……、」

「理人が、湊に頼めって。」

「……理人さんが?」


湊が、あたしの頼みを素直に聞き入れてくれる訳なんかない。
そんなのはわかってた。だからこそ口にしたのは、理人の名前。

高校の生徒会で理人の後輩だった湊は、何故か理人には逆らわない。あたしがいた7年前の世界では、そうだった。


「……理人さんの頼みなら、仕方ねーや。なら、さっさと行こうぜ。」


案の定、その関係は今になっても継続中らしい。表情は相変わらずしかめられていたけれど、嫌々ながらも読んでいた雑誌をソファーに置き、湊はゆっくりと立ち上がる。


「あーあ、めんどくせー、……あ。」


けれど、両手を上に突き上げるように体を伸ばした刹那、湊の視線はあたしの後方を捉えたまま動かなくなった。

どうしたのかと思いあたしも後ろへと視線を走らせれば、湊の視線の先に居たのは、つまらなそうにこちらを見ている莱の姿。

何だか嫌な予感がして再び湊に視線を戻すと、あたしと視線が絡むや否や、湊はゆっくりと口角をつり上げた。

もう、それはそれはいやらしく。