透明水彩


「そっか。なら仕方ないね。」

「うん、ごめん。」


手早くスーツの上を着ながら、本当に申し訳なさそうに眉を下げる理人。
でもそんなに、気にしなくたって良いのに。あたしのは急ぎの用でもないし、明日だって明後日だって、別に構わないのだ。

そう理人に伝えようと口を開きかけたけれど、何かを思い出したように口を開いた理人を見て、出しかけた言葉を飲み込んだ。


「……あ、そうだ美凪。どうしても行きたいなら、佑稀にでも頼んでみなよ。あいつなら今の街にも詳しいと思うし、今日は確か、休みで暇してるはずだよ。」

「湊…?」


紡がれた言葉に、思い出される先日の湊とのやり取り。それが脳裏をよぎると同時に、微かに眉間にシワを寄せてしまったのが自分でもわかった。

別に、湊に何をした訳でも、された訳でもないけれど。
あたし自らのとった態度によって、湊が何かを思っているのは恐らく間違いなくて。ここ最近、無意識に湊を避けていたのは自覚していたから。