透明水彩


「……まぁ、その話はもういいよ。それで、美凪。何か俺に頼みたいことがあったんだろ。何?」


けれどそれは本当に一瞬で、そうあたしに問い掛ける理人は、もういつも通りの表情を浮かべていて。


「何?って……、」


急な話題の変換に、あたしは多少戸惑いつつも記憶を辿り、何故ここに来たのかと振り返る。そして思い出す、大切な用事。


「あ、そうそう。……あたし、外出がしたいの。この世界の今を知りたい。だから理人に、今日1日付き合ってほしいなって。」


そう言いながら理人を見つめれば、彼は何かを考えるようなそぶりを見せた後、申し訳なさそうに眉を下げた。

断られるな、あたしがそう察するのと同時に、理人は口を開く。


「ごめん、美凪。付き合ってあげたいのは山々なんだけど、今日は無理だ。これから任務で藍香と一緒に偵察に行かなきゃならないし、藍香をもう外で待たせてる。」


…――ほら、やっぱり。

予想通りの答えに、藍香が居なかった事実が重なる。だから無意識にさっきまでの疑念を胸にしまい込んで、あたしは小さく息を吐いた。