透明水彩


刹那、ぽん、と優しく頭にのせられた手。
唇を噛み締めたまま顔を上げれば、目に映ったのは柔らかく微笑んだ理人の表情だった。


「……美凪、別に謝ることないだろ。あ、いや、ノック無しでドアを開けたことに対しては謝るべきかもしれないけど。もう、昔のことに対して謝るのはやめろよ。第一、君が謝る必要はない。それにこの傷痕は、美凪を守れなかった俺自身の戒めだ。」

「戒め……?」


あたしを、守れなかった?

優しさに触れたと思ったや否や、新たに沸き上がる疑問。理人はいつ、あたしを守れなかったのか。

7年前のあの日は、確かにあたしは、理人に助けられた、守られた。

もしかして、あたしが知り得ない7年前から5年前の間のこと?っていうか、まさかあたしが死んだ時のこと、とか?

思考を巡らすあたしの様子に、少々口を滑らしてしまったのに気づいたのか、一瞬、理人の顔から笑みが消えた。