透明水彩


けれど。


「……第一、俺、フツーに好きな人いるんで。」


不意に発された莱の言葉に、自分の表情が固まったのがわかった。

だって、何?
好きな人がいる、だって?


「…そーなの?」

「ハイ。だって俺がROSAに入ったのも、昔からその人に憧れてたからなんですよー。」

「へぇ。」


たとえ芽梨ちゃんと付き合っていなくても、莱には好きな人がいる。

そんなの、別に予想できなかった訳じゃ無い。むしろ、当然であると言ってもおかしくはなかったのに。

その新たな事実に、確かに、あたしの胸はぎゅっと痛んだ。平然を保ちながらも心中動揺したのは、疑いようも無い事実だった。


「……じゃあその人、ROSAの人ってことでしょ?今もいるの?」


動揺を隠すため、かろうじて紡いだ他愛もない問い。

…――莱の好きな人って誰だろう?

ただ純粋なそんな想いが、あたしの心中を支配する。
その人へと思案を巡らし続けるあたしを尻目に、莱は哀しげな表情を浮かべて、頭上に広がる星空へと視線を投げた。