透明水彩


階段を上がりきった突き当たり、設置されている小さなライトが微かに辺りを照らす。そんな中、あたしがこのアジトに連れて来られたときと同様、莱は何らかの装置にカードを翳した。

すると聞き覚えのある轟音が微かに響き、程なくして視界は開かれた。広がる廃材の山は相変わらず変わりなくて、一瞬だけ嫌な記憶が過ぎる。


「…えーっと、こっちですー。」


そんなあたしを気遣ってか、あたしの気持ちを振り払うかのように声をあげた莱。彼に促されるまま足を踏み出した刹那、夜特有の冷気が頬を掠めた。

……ああ、何か、この感覚久しぶりだな。


「ここ登るんですけど、大丈夫ですか?手、貸します?」

「ん、お願い。」


アジトの出入口に程近い廃材の山の上へ莱の手を借りてよじ登り、一足先に上がっていた莱の横へと腰掛ける。高くなった視界で大きく息を吸えば、新鮮な外の空気が肺を満たした。

刹那、そんなあたしの様子を見ていた莱が、ゆっくりと口を開く。


「……ほら美凪サン。空、見てください。」


そう言うのとともに、指差された夜空。
数多の星が輝き瞬く光景が目に映り、息が詰まりそうになるほどの衝撃を覚えた。