透明水彩


ゆっくりと振り返れば、そこにいたのはやっぱり莱。エメラルドグリーンの瞳が、不審そうにあたしを映して揺れる。


「何で目があった瞬間逃げちゃったりするんですかー?」

「いや、まぁ、何となく?…っていうか莱、帰ってたんだね。」

「まー、芽梨のおかげで散々でしたけど。」


上手く話題をそらせたようで、内心ほっと一息つく。まさか、莱に関して悩んでて顔を合わせにくかった、だなんて、間違っても言えない。


「そーだ、美凪サン。今ちょっと時間あります?」

「え?…ある、けど。何で?」

「細かいことはおいといて、とりあえずついてきてください。」


そんなあたしの心中を知る由もなく、莱は急に何かを思い出したらしい。あたしの問いに答えることなく、そのままあたしの右手を引いてアジトの出入口へと向かう。


「ちょ、莱?」

「湊センパイとか隊長とか芽梨がうるさいんで、秘密ですよー。」


そして莱が小さく笑ってそう呟いたと同時に、目の前に続く長い階段を2人で上がった。莱に、引かれるがまま。