『…もしもし。』
けれど。
ツーコールで繋がった電話の向こう、聞こえてきた幼なじみ――藤倉理人(ふじくら りひと)の声に、張り詰めていた糸がプツン、と切れた。
まるで堰を切ったように溢れ出した涙で、言葉が詰まる。数秒前、理人に電話をかけたときのような冷静さなんて跡形もなく消え失せ、何を話すつもりだったのかさえわからなくなった。
そしてただ、さっきの凄惨な光景がフラッシュバックする。まざまざと脳裏に映し出される様子と重なり、見えるもの全てが赤く染まっているような気がした。
『…? 美凪だろ?どうしたの?』
「……怖い。」
『ん?何?』
「怖いよ、理人…」
『待って。何が怖いの?何かあった?』
「…――理人、助けて。」
あたしの尋常じゃない様子にただならぬものを感じたのか、次第に焦りを帯びる理人の声色。
噛み合わない会話なんて気にもとめず、あたしは壊れたように“怖い”と“助けて”を繰り返した。
…――それしか、できなかった。


