透明水彩


「……俺だって、笑うときはフツーに笑いますけど。」

「あはっ。わかってるよ、そんなの。」


少しふて腐れたような莱に笑い返せば、刹那、むくれかけていた表情が微かに緩む。

さっきみたいな笑顔、とまではいかないけれど、初めて会った数日前よりは明らかに表情は柔らかい。


「…あ。そーいえば、」

「莱っ!!」


そして、何かを思い出したかのように口を開いた莱の言葉を遮るように、早朝の大広間に響き渡った甲高い声。

あまりにも突然の大声に、驚いて莱と同時に声の主へと振り向けば、それよりも早く、鮮やかなチェリーピンク色があたしの視界へと飛び込んできた。

…否、正確にいえば“鮮やかなチェリーピンク色の髪を綺麗に頭上でまとめた少女が、あたしの目の前にいる莱に思い切りダイブした”訳だけれど。