透明水彩


はっとして勢い良く上半身を起こせば、一瞬、くらりと揺れた視界。
でもそんなのに構うことなく、ソファーの傍らに腰掛ける莱へと視線を向けた。


「何と言っていいか……、何か、本当にごめんなさい。」


雨の記憶と恐怖でぶっ倒れた、だなんて。情けない。
今までそこまで酷い症状はなかったのに。

事実、あたしは昨日の雨に半狂乱になり、知り合って間もない莱に迷惑をかけた上、意識まで飛ばした。そして恐らく一晩、付きっきりで看病までさせてしまったのだろう。


「ごめん。」


何、やってんだか。
心底、自分が嫌になる。やるせなさを堪えるように、強く唇を噛み締めた。

――刹那、


「もう、謝んなくっていいですって。こんなのたいしたことじゃないですしー。あんな風に倒れた人を、放置しとく訳にもいかないでしょー。」


呆れる訳でもなく、同情する訳でもなく、はたまた、ただ儀礼的に述べられたという訳でもなく。そんな風にあたしをフォローするような言葉を紡ぎ、莱はあたしの視線と同じ高さになるように床に膝をついた。