透明水彩


まるで、逃げるように。
悲しみを、忘れるように。

実際は何の解決にもならなくて、ただ背を向けて逃げているだけ。結局はあたし自身が、向き合わなければいけないことだと、わかってはいたけれど。

どのくらい走ったかは定かでは無い。呼吸が苦しくなるまで走り続け、そして、明るい街灯の下で蹲った。

激しく降る雨のおかげで、手足の血は流れ落ち、制服の血はぼんやりと滲んでいる。自分が泣いているのかどうかも、もう、わからない。

たたき付ける雨に溶けて、このまま消えてしまいたかった。全て雨に流して、やり直すことができたらいいのに、なんて、無理なことを思ったりもした。

けれど。

結局は全て、現実逃避でしかない。
受け止められない現実を受け止めることでしか、前には進めない。

ずぶ濡れで身体に纏わり付く制服のポケットをまさぐり、携帯を取り出す。濡れすぎて使えないんじゃないか、その不安も多少はあったものの、心配はいらなかったらしい。

震える手で電話帳を検索し、とりあえず今の状況を、少なからずあたしに手を貸してくれるであろう人に電話をかけた。