大学時代から身に付いていた貧乏性がそうさせるのか、それともこれが人権擁護裁判の最前線に立っている弁護士の現実なのか……?


 安易には聞けないことだったが。


「須山先生はなぜ弁護士に?」


 江美が食後のデザートを口に運びながら問う。


「俺?俺はそうだな……まあ、一つは大学入学時に小説家を志望して文学部に入ったんだけど、その手の才能、まあ文才ってやつだけどね、それがないって思ったから、法律の方に軸足を移したんだ」


「へえー、変わってますね。あたしは須山先生ぐらい賢い方なら、作家の方が返っていいんじゃないかって思いますけど」


「いや、それがね。東都大の文芸サークルに入って思ったんだけど、俺が当時書いてた文章と、同期で今現役の作家になってる人間の文章のレベルがあまりにも違ってたんだ。だからこっちの方の道は難しいだろうなって思ってさ。いったん諦めたんだよ」


「ふーん、複雑だな」


 江美は納得が行かないらしい。


 だけど東都大出身の作家など吐いて捨てるほどいる。