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 二月も終わりに近付くと、都内も幾分冷え込んでいるのだが、春は近い。


 ずっと仕事は続いていた。


 運動不足になりがちである。


 事務所で仕事をしていると、どうしても運動量が減る。


 それに温かさが増してきつつあったので、開放的になっていた。


 眠気が差すときはコーヒーを飲み、目を覚ましてから、仕事に取り組む。


 ビル放火犯の野川の裁判で、被告人の犯行の事実を立証するのは検事の高山だ。


 原告も被告も双方が身構えていた。


 控訴審はもうすぐ始まり、一審に続いて、追加の証人調べなども執り行なわれる。


 一審で敗訴した川谷も逆転できるような新証拠を探し出すつもりでいるようだった。


 だが野川の行ったビル放火で、便乗するようにして大量殺戮が引き起こされたことに対し、酌量の余地はほとんどない。


 再び厳罰が下るものと思われる。