そして執行猶予期間中も犯罪に一切手を染めることなく、ちゃんと会社で仕事をした。


 今田は相当恩義を感じているのだろう、こんな朝からでも連絡してきた。


 一言訊く。


「お仕事は順調ですか?」と。


「ええ、あれから再就職した会社で何とか仕事が出来てます。もう外では酒を一滴も飲みません。先生のお陰です」


 ――そうですか。それはよかった。私も心配していましたよ。今田さんがお酒を飲まれると、カッとなったりされるのが怖くて。


「大丈夫です。もう二度と警察や弁護士さんにお世話になることはありませんから」


 ――分かりました。では、お仕事頑張ってください。


「はい。では失礼いたします」


 電話が切れて受話器を置くと、業務を始めた。


 こういった過去の案件のクライアントからも電話連絡などが来るのだ。


 まあ、僕自身、この世界に入ってからもう十年以上経つのだが……。