僕もテーブルの上にあるコーヒーの入っていたカップに口を付け、啜った。


 ずっと疲れてしまっていた体が少しは楽になる。


 何も焦ることはないと思いながら……。


 それに野川の控訴審の法廷に傍聴しに行くことはないだろうなと感じられた。


 もう僕も江美も、野川はおろか、ビル放火事件に関係ないのだし……。


 しばらくは担当中の案件に関して淡々と業務をこなしながら、来月の旅行を待つ。


 二人で行ける場所は多分解放的だろう。


 島などには滅多に行かないのだし……。


 それに僕もずっと働き詰めだったから、ここら辺りでゆっくりしたい。


 去年一年間も今年の最初もずっと走り続けてきた。


 休む間もなく。


 その日、カフェでティータイムを楽しんだ後、翌日また事務所で顔を合わせた。


「おはよう、敬一」