れたことだし」


「川谷弁護士がどんな手を使うか楽しみね」


「俺もそう思う。おそらく汚い手も使ってくるだろうな。裁判でも民事じゃなくて刑事だと何でもありだしね」


「証拠の捏造とか?」


「それもある。でも次の控訴審までに川谷弁護士が全ての関係書類に目を通すことは不可能だって思うな。二審で逃げ切ることも無理に等しいし」


「じゃあ、敬一は川谷弁護士が敗訴する可能性の方が高いって思う?」


「常識的に考えてもそうだろうね。でも控訴審で負けても上告して最高裁まで争うことは
可能だからな。いくら野川がクロでも」


「難しい裁判になりそうね。でもそんなこと考えてると、弁護士なんかやれないわよね」


「ああ。切り捨てるところは思い切って切り捨てていいんだ。不要なものとしてね」


「何か因縁みたいなものがありそうで怖いわ。あたしも平常心じゃいられない」


 江美がそう言って、店員から淹れてもらっていた紅茶を一口啜る。