「園岡、昨日の裁判の公判記録は読み直したか?」


 と訊いてきた。


「ええ。……残り四分の一ほど読み残してますが」


「君はまだ若手だ。これから大いに育っていくと思う。あの裁判の真相は警察と検察のでっち上げた調書の類にあった。特に警察官の書いた員面調書は滅茶苦茶だ。全くデタラメなことが書いてあり、木崎さんが犯人に仕立て上げられた。そして検事の能島が木崎さんを無理やり法廷に引っ張り出したってのがホントのところだ。俺たち弁護士はそういった冤罪事件を二度と生まないよう、気を付けるべきなんだよ。分かる?」


「はい。須山先生は刑法のプロですから、今回の事件で木崎さんを弁護するのも簡単だったと思いますが」


「そこが甘い。俺だってしょっちゅうそんなクライアントばかり拾ってるわけじゃない。それに君が東京拘置所に定期的に接見に行ってることも知ってる。いいじゃないか、それで。君が出来ることはちゃんとやれてるよ。安心しな。君は伸びる。まだひよっ子の類だ。荒削りでいい。弁護士も若いうちはな」


 須山がそう言って笑う。


 同時に、


「君はあの彼女と付き合ってるのか?」