寺田を殺害したのは木崎ではなく、どうやら篠岡と中邑であるということを。


 そして仮にそうなった場合、能島がどんなに証拠を掻き集めたところで、検察の不手際という事実は拭えない。


 証人調べでも検察側が第一審で提示していた証拠は全て却下された。


 代わりに取調べが終わって起訴された篠岡と中邑の二人が、東京地裁で裁かれる手筈が整う。


 殺人罪である。


 しかも警視庁内での取調べの結果、両者間に共同正犯が成立していることが立証された形で。


 須山ももちろん法廷内で証人に対して、調べを進めた。


 能島がもう一度法廷に来て欲しいと言っていた、第一審時に検察側の証人だったホテルクラークの林綾子は出廷を拒否している。


 下手すると、偽証罪に問われるからだ。


 青鹿はあの日の夜のことをずっと法廷で話し続けた。


「確か、私の記憶が当たっていればですが、木崎さんが電話先で相当動揺されていたのを