ねーちゃんは、階段の手前で立ち止まり、臨時休業と書かれた黒板が乗っかったイーゼルを見て、意を決したように、俺を振り返った。

唇が小さく震えているのに、ねーちゃんは、俺に「大丈夫?」と言った。

聞きたいのは俺の方だ、と思いながらも頷いてみせてやる。

ねーちゃんもこくりと頷くと、ドアに手を伸ばした、その時。

「トモミちゃん?」


俺が、

一生、

声に出して呼ぶことはないであろう、ねーちゃんの名を、

軽々しく呼ぶ声がした。