「…………もしもし?」

留守電でいいと思ってたのに、ワンコールでねーちゃんが出た。

ねーちゃんのアルトの声が、俺の耳からどうしようもなく染み込んできて、

心の準備が出来てなった俺は、

自分だと名乗りそうになるのを慌てて堪えた。

「もしもし?…………誰?」

眠っていたのか、かすれた声だった。

どうしよう、切らなきゃ、でも……。

もう少し、あとほんの少しだけでいい。

ねーちゃんが間違い電話か、イタ電だと思って切ってくれるまで。

ねーちゃん、あんたの声を聴かせてくれ。