からかうようにそう言い、イチムラはカバンを持つ。

勝ち逃げをしようって腹だ。

イチムラは見抜いてるだろう。

ねーちゃんと一緒の時にだけ見せる俺の顔を見て、一瞬にして見抜いてるだろう。

誰にも隠し通してきた俺の気持ちを。

「あたしね。」

俺に背を向けたまま、イチムラは言う。