「名字は?」
「西城。西城菜穂」
颯に聞かれて答えた瞬間、少しだけ、少しだけだけど時間が止まった気がした。
「…知り合いなの?菜穂と」
心の中で浮かんだ事実を問い掛ける。
菜穂は昔髪を明るく染めていたし、夜遊びもしていた。
ここら辺の族事情にも詳しいし、情報通。
蓮達と繋がっていても、不思議じゃない。
「う、うん…世間って狭いんだね…」
ははは、と虚ろに笑う颯。
その様子に、自然と眉が下がる。
もしかして女嫌いの隼はまだしも、菜穂と蓮達って仲悪いのかな…
そんなあたしに、蓮は大丈夫だ、と頭を撫でる。
「菜穂さんは、俺達獅龍の同盟であるレディースのトップ張ってた人だ」
「トップ…」
蓮が菜穂のことをさん付けで呼んだことよりも、トップを張っていたことに驚いた。
過去形ってことはもうやっていないんだろうけれど、そんな話は聞いたことがない。
まあ、菜穂らしいと言えば菜穂らしいけど…
「知らなかったのかよ」
大河に言われて、唇を尖らせる。
「うるさいなぁ。知ってようが知ってなかろうがどっちでもいいじゃん」
「友達なのに?」
「友達じゃない、親友……どっちかと言うと家族かもね」



