パッと鯉から視線を外して、音がした方を振り返る。 ここはみんなが寝ているところから離れているし、きっと今の何かが落ちたような物音には気づかない。 気づいているのは、今ここで起きているあたしだけ。 それに……。 『っざけんな‼︎‼︎』 あの声は……。 庭園から出て、音がした方へ急ぐ。 「なんで、なんでそんなことになるんだよ‼︎」 彼らしくない、荒ぶった声のする戸を開いた。 見えたアッシュブラウンに、やっぱり、と思う。 「――颯」 あの声は、確かに颯だった。