「菜穂」


「あ、真梨。お帰りー」


「ただいま」




後ろから、蓮がゆっくりついてきてるのも、だんだん不機嫌になってるのもわかってた。


それは多分、周りの男があたしを見てたから。


そして、何度呼んでもあたしが振り返らなかったからだろう。




あたしたちがいない間に帰ってきただろう菜穂と大河は、なんだかさっきとは真逆の雰囲気。


どうやら上手くいったらしい。




「おめでとう」




とりあえず祝いの言葉を口にすると、菜穂の顔が赤く染まった。




「ちょっと、真梨……っ」


「菜穂ってそんな顔もするんだ?」




ふふっと笑って隣に座る。


大河は蓮に近づいて絡んでいる。


照れ隠しだろうか。


大河が蓮の肩に腕を乗せて、耳元で何かを囁く。


蓮と目が合って咄嗟に逸らすと、大河の笑い声が聞こえた。




「もう……っていうか、蓮と何かあったの?」


「……別にー」




我ながら子供っぽいとは思う。


だけど、蓮の前でそんなこと気にしてられない。


どうすればこのドロドロとした感情がなくなるのか。


恋愛経験がないあたしに分かるはずがないのだから。