二年前、菜穂は真梨と出会って。
真梨は噂と違って人間不信で。
そんな真梨がほっとけなくて俺とあまり会えなくなって。
その三か月後、真梨が落ち着いた頃にクラスメイトの男を家に入れた。
真梨の男嫌いを治すために。
そこに菜穂の目撃情報を受けた俺が押しかけて。
そして、勘違いした俺の一言で俺達は別れた。
それはたくさんの人に影響を及ぼした。
俺は菜穂を忘れようと女遊びに走り、
菜穂は立ち直るのに時間がかかって、
その間に真梨は男遊びにのめりこんだ。
真梨と俺が足を踏み入れたその世界。
その行為に愛は無いのに、寂しさが紛れて、自分の存在価値がある気がして。
きっと俺も真梨も、そんな麻薬のようなそれにのめりこんだ。
だけどそれは、たった一人の人が出来れば別の話で。
現に真梨は、分かりやすいくらい蓮が好きだと思う。
だから、と言うわけじゃないけど。
もう一度、チャンスが欲しい。
やり直す、チャンスが欲しい。
「菜穂」
その名を呼んだ声は、震えていたかもしれない。