「一つ、教えてあげようか」


「……何を?」


「真梨が男遊びをするようになった理由」




言葉を発さずに、俯く。


無言は、肯定を示す。




「気付いたら、真梨はその…あたしが連れて来た男と体の関係を持ってた」




菜穂の表情は相変わらず無表情で。




「何で気付かなかったと思う?真梨がアイツと関係を持ったこと」




だけど、次の瞬間それは歪んだ。


苦く、悲しく、歪んだ。




「……大河が、好きだったからだよ」




菜穂の瞳に浮かんでくる涙に、眩暈がした。


初めて聞いた愛の言葉に、心が悲鳴を上げた。




「好きだったから。大河と別れて、あたしは崩れちゃったの。真梨に笑い掛けれるほど強くなかったの…
真梨も何か感じたのか特に何も言わなかったから、あたしはそれに甘えたの。

そしたらね、気付いたら……」


「真梨は、男遊びにハマってた」




そう言うと、菜穂は小さく頷く。




「しかもね、おかしいの。真梨が遊ぶ男の子は爽やかでスポーツ少年みたいなのばっかりなんだ。
まるで、あたしが連れて行った男みたいな」




だから菜穂は真梨が遊び人になった原因は自分だなんて言ったのか。


自分が、真梨を放っておいたから。


自分がキッカケになる男に会わせたから。


だけど、悪いけど。


今は真梨よりも、聞かなきゃいけないことがある。




そっと伸ばした腕で、菜穂を抱き寄せた。