「あたし、蓮と出会えてよかった。蓮を好きになってよかった」



右隣の蓮を見つめる。目が合って、微笑んだ。



「蓮……分かってると思うけど、お願いがあるの」



蓮と繋がれた手に、力がこもる。覚悟を決めなきゃ。

自分の過去と向き合う覚悟を、決めなきゃ。

でも……。



「あたしは、弱いから……ひとりは、怖い」



怖い。父親に、ヘンリーさんに会う時だって、相当の勇気がいった。

そして、今度は母親。

母親は、あたしの知ってる母親は……畏怖の対象でしかない。



「あたし……蓮みたいに強くなりたい……。でも、まだまだ弱いから……一緒に、行ってほしい」



まっすぐに、蓮を見つめる。蓮も、あたしを見つめ返した。



「全然強くねぇよ……。けど、そうだな。一緒なら、きっと大丈夫だ」



蓮のあいた右手が、あたしの頬に触れる。冷たい手の感触に、あたしはすり寄った。