病院から帰る途中、あたしと蓮はある丘に立ち寄った。
バイクから降りて、丘の上から街を眺める。
陽が落ちかけ、辺りが橙に染まる。街の奥には海が見え、その海もオレンジがかってキラキラと輝く。
夕焼けに照らされた蓮の銀の瞳が色を帯びた。
「蓮……?」
すごく綺麗……だけど、どうしてここに連れてきてくれたのか、よくわからなかった。
「……真梨に話さなきゃいけねぇことがある」
「話さなきゃ、いけないこと……?」
遠くの方を見ていた蓮が、あたしを視界に捉える。
「俺のこと」
「蓮の、こと……」
あたしは、蓮のことで知らないことがたくさんある。
知っていることの方が少ない。
名前、年齢、誕生日……。目の色は、カラコンじゃなくホンモノだってこと。
あとは……蓮が、すごく強くて、頼りがいがある、獅龍の総長だってこと。
正直、そのくらいしか思いつかない。
「真梨が、俺を頼ってくれて嬉しかった。真梨のことを知れて、本当によかった」
「…………」
「でも、それだけじゃダメだ」
蓮の真剣な瞳が、あたしを射抜く。