「え……」

「何も、できなかっただろ?俺」



そんなふうに思ってたんだ……。



「そんなこと、ないよ」



我ながら、すごく優しい声が出た。



「隼は、ちゃんと守ってくれたよ」



『俺らの大事な女に手ェ出すなっ!!!!!!』



隼が言ってくれた台詞を思い出す。

すごく、嬉しかった。勇気が出た。

あの時隼がいなかったら、あたしは抵抗することもなかったかもしれない。

あのまま、キョウのものにされてたかもしれない。



「隼がいてくれて、本当によかった」

「ほんと……?」



隼の声が、掠れている。ずっと、気にしていたのかもしれない。

そう思うと、男性にしては華奢なその体を、抱き締めたくなった。



「うん。あの時は本当にありがとう」

「別に……」



すん、と鼻を啜る音がする。

しばらくしてこっちを向いた隼の鼻が赤くて、思わず笑みが溢れる。



「なんだよ」

「ううん、何にも」



かわいいなあ、その言葉は飲み込んだ。