「どういうことだい……?」
「いえ、気にしないで下さい」
ヘンリーさんから目をそらす。
そこまで知られたくない。仮にも自分の娘が他の男のそんな対象になってる話なんて、聞きたくはないだろう。
「リリーさんは……今、どうしてるんですか」
「マリーがいないと知って、病んでしまって……今は療養施設にいるよ」
「一緒には住んでいないんですか……?」
「私を見ると、マリーを思い出してしまうみたいでね……会うことすら、なかなかできないんだ」
「そう、ですか」
ヘンリーさんも、すごく苦しんだはずなのに……気の毒にも感じる。
でもやっぱり、あたしをもっと別の人に預けてくれていたら……。
ヘンリーさんが、前を向いてあたしを育ててくれていたら……。
そう考えてしまうのは、いけないことだろうか。
「マリー、お願いがあるんだ」
「何ですか……?」
「リリーに……君の母親に会ってくれないか?」