ヘンリーさんが頷く。



「実は……賞を取って数年して、リリーが目を覚ましたんだ。それからずっと、マリーを探していた」

「え……」

「マリーを預けた水川さんとは、ずっと連絡がつかなくて……やっと見つけた時にはもう、マリーはいなかった」



中学3年の頃、あの人から離れたから……あの女を見つけたのは、ここ1、2年の間の話だろう。



「その時に、マリーがどんな風に育ったのか聞いて……っ」



ヘンリーさんは嗚咽を漏らす。その姿は、本当に後悔しているようだった。



「本当に……申し訳ない。全て、私の責任だ。私を許してくれなくて良い。どうか、罪滅ぼしをさせてくれ……」



ヘンリーさんだけが悪いわけじゃない。不幸が重なっただけ、とも言える。

ただ、やっぱりあの女じゃなければ……そう思う気持ちは、消すことができない。

ヘンリーさんの謝罪には返事をせず、口を開く。



「あの人は……何か、言っていましたか」