「あの……あたしの母親とは、いつ別れたのでしょうか」
あたしが虐待を受けるようになる前? それとも生まれる前?
子どもを作って捨てるなんて無責任だとは思うけど、罪だとは思わない。
父親がいなくても、ちゃんと育てられる母親は世の中にたくさんいる。
でも、もしも……あたしが覚えていないだけで、虐待の事実を知っていてあたしを放って別れたのだとしたら……あたしは、この人を軽蔑する。
「まず一つ、マリーに伝えなきゃいけないことがある」
「何ですか?」
「マリーの育ての母親は、マリーの実の母親ではない」
“実の母親ではない”
しばらく、理解することができなかった。脳が拒絶していた。……理解したくなかった。
もう11月だというのに、冷や汗が出ている。
「どういう、ことですか……」
「もしかしたら知っているのかと思っていたが……そうか、彼女はマリーに何も言わなかったんだな」
全身が、小刻みに震え始めた。
どういうこと……? あの女は、あたしの母親じゃない?